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2010年1月14日
これから雪山を攻めてみたいというフツーの人に贈る、冬の八ヶ岳レポート
もともと関西人だったのもあって、冬山はとても縁がないものだった。登ったと言えばちょっと雪が積もっている金剛山とか、積雪というよりはアイスバーン全開な赤目四十八滝とか、南国だからと油断していると痛い目に遭う、新年の久住とか。
思えば久住が一番冬山らしい冬山だったと思う。
そんな僕が今度は八ヶ岳の硫黄岳に行ってみた。冬山レベルとしては初級らしい。久住よりは相当レベルが高そうではあるが...
八ヶ岳は以前社員旅行の自由行動で蓼科に登ったのが始まり。以来、その独特の山様に魅せられつつ、なかなか機会がなくて登れなかったのだけど、10月についに赤岳に登れた。
夏登ったら次は冬だねとは誰も言わないのだけど、八ヶ岳の場合は通年営業している山小屋があったり、アプローチが便利だったりして、冬山入門としてもうってつけであることが伺える。装備を整えて、12月の八ヶ岳へ向かったのだ。
深夜に家を出て、談合坂で仮眠。早朝に出発して諏訪南から美濃戸口へ。
四駆などの恵まれた車であれば、さらに美濃戸の赤岳山荘の駐車場まであがることができる。徒歩に比べて1時間稼げる計算になるけど、駐車料金は美濃戸口の倍になる(美濃戸口は1日500円)。
装備を整えて美濃戸へ歩いて行く最中、30分ぐらいのところで試しにと持ち込んだハイドレーションが凍結。これから起こる波瀾万丈を予告するかのよう。
飲料水が凍ってしまってはいけないので、持ってきたテルモスに中身を移し替えて登山を続行。美濃戸山荘(冬期休業中)の軒下でおにぎり2個で昼食。
時折小休止を挟みながら、北沢を赤岳鉱泉へ。初めてじゃないルートであったのと、天候が良かったのもあり、美濃戸から4時間ほどで到着した(標準タイムよりは遅い)。
実は登っている最中に、愛用のサングラスを落としてしまってた。気がついたときはすでに遅く、サングラスなしで稜線にでるなんて...とちょっと怖じ気づき始めた。
山小屋でテントの受付を済ませると、主人から「イオウ?イオウなら今のコンディションでも大丈夫だね。ただ、稜線は風がすごい強いから、浮きそうな感覚があったら、イオウであってもすぐに下山した方がいい。30m飛ばされた人とかもいるからね。」
この道一筋の人の意見を聞き入れることにする。
ついでに腹が減ってきたのでラーメンをいただいた。その後にテントの設営。
設営場所は少し悩んでから、杉の木の下の落ち着いたエリアを選んだ。
フットプリントを敷いてみて位置を確認。変な枝や石が露出していないかを確認しながら、雪と氷の固まりになっている地面を水平にピッケルを使ってならしていった。
ある程度ならせたかなというところで設営。テントは木の下で、出入り口もそちら側に配置した。
ザックから寝袋とマットを取り出して、いつでも眠れる体制を整えて入室。使っているテントはMSRのHUBBAHUBBA HPというやつで、正直冬山に使うには厳しすぎる。ベンチレーションもないようなものなので、ものすごい結露が予想される。
寝袋とマットさえしっかりしていれば、テントが貧弱でも行けるんじゃないかという予想に基づいているのだが、はたしてどうなることやら。
夕食はインスタントパスタ。山小屋で買ってきた暖かいお茶(テルモスに入れてもらう)と、重い思いをして運び上げてきたシャンパンをあけた。
驚いたことに、自分たちの吐いた息が空気中で結露して白くなるのはいいとして、それが延々とテント内に漂っているのだ。シャワールームかここはってぐらいに。そしてそれがいずれテントにくっついて結露して、凍って、テントの内側がキラキラ光っているのに気がついた。
近くのテントにいるおばちゃん軍団があり得ないほどうるさかった。「悦子がー!悦子がー!(おそってくるとかそんなことを下品に叫んでいる)」とかうるせーので「悦子うるせー!」と叫んでおいた。それを聞いた近くのテントから失笑。
19時ぐらいにみんな就寝。
今回、マットを忘れた友人に僕のマットを貸していた関係で、僕の寝袋の下はエマージェンシーシートと脱いだゴアパンツがしかれているだけという状況で、夜は寒くて寝苦しかった。慣れの問題かもしれないけど。
足下には除去したはずなのに大きな石ころがあって、それがごつごつ当たって痛くて、おかしいな、ちゃんとならしたのに。と思いながら何度も寝ては置きを繰り返して、4時ぐらいに起床。
靴を履いてトイレへ。扉が凍り付いてしまっていて、居合わせた人と一緒にこじ開けた。「凍ってるって言うか、外れちゃってるみたいでね。昨日もはずれてたよ。」とその人。
その後、テントへ戻ってその辺の雪をかき集めてバーナーで溶かし、インスタントリゾットをたらふく食べて出発の準備。気がついたら日が出てきて、続々と周りの人たちは目的の山へ出発して行ってた。我々は一番近い硫黄岳ピストンなので、割とのんびり過ごしてた。
出発を前にマット代わりにしてたパンツを回収。その時に石の正体がわかった。飲料水のパックが凍ってしまってた。
水分はとにかくとことん凍る。そんな世界。凍らせたくない場合は寝袋の中に入れたりとかするそうだ。なるほどな。
アタックザックなんてないので、荷物を抜いたザックにそのまま菓子類を詰め込んで出発。山小屋前でクランポン装着。
靴は厳密にウインター用ではないので一抹の不安を覚えるが、それほど不便を感じなかったのはルートが優しいせいか。いずれはちゃんとした靴に買い換えたいなと思いながら硫黄岳への道へ入った。
しばらくは森の中を抜ける、異世界感たっぷりの山道。沢を渡ったあたりから徐々に山登りになってきた。スタートが遅かったのですでにトレースもしっかりついていて、道に迷うことなく、文字通り一直線に山頂を目指せる。
気になるのは木々の間から見えるダークグレーの雲底ぐらいで、森の中にいるせいか風も強くなく、のんびりとしたスノーハイク状態で進んでいく。小休止は2回ぐらい。
後半、赤岩の頭と呼ばれるポイントまであと30分ぐらいかというところから森林限界を抜けた。風向きが一定のようで、つづら折れのポイントで急に風が強くなったりする。さすがにそのポイントでは目出帽をかぶり、フードをしないと目を開けているのもつらい状況。
そして進むごとに「これ、稜線やばくね?」という雰囲気がどんどん増してくる。
そして最後のスイッチバックを迎える直前、一気に視界が真っ白に。稜線は風速20m/sを超える風が吹き続け、それで煽られた雪でホワイトアウト状態に。かろうじで稜線下にいたので強風は免れているものの、少し進めばもうそこは吹雪。見るとトレースも完全に消えていた。
「とりあえず案内板まで進んでみよう」と歩いてみるが、トレースを外れてしまったのかいきなり腰あたりまでの積雪に阻まれた。
なんとか誰かが踏み固めたところを探し当てて、案内板の下へ。
硫黄岳山頂には爆裂火口と呼ばれる絶壁があって、稜線も狭め。そのため、歩く道筋には看板やケルンが頻繁に置かれてある。雪が積もっているだけならダラダララッセルしたりして山頂を目指すのだけど、この強風。とりあえず、20mほど先にある看板まで歩いてみようと思って、GPSに位置情報を登録しようとしたら、低温すぎて液晶がまともに表示されない。
なんとか地点登録を済ませて歩き始めるも、数歩で風と雪に阻まれて前に進めなくなってしまった。
「撤退ー」と合図して来た道を戻った。
山頂の手前、500mぐらいのところだった。
下りはとことん楽。下は雪でクッションになっているし、所々のつづら折れは、手前で雪滑りしてショートカットしたりと、遊び心満天で降りた。特に休憩することもなく。
風の通り道になっているルートはすでにトレースが消えかかっていて、これといった目印のテープもなく、あと少し遅かったらと思うと戦慄した。こんなところで迷ったら一発でおしまいだよなーと。
下山中、大同心などを登り終えた玄人集団と一緒になったりした。ハードなところを攻めるクライマーは見た目からしてやり手。早くああいうレベルになりたいなと。
ものの1時間足らずで下山。赤岳鉱泉で牛丼やカレーをいただいた。少し暖まってから撤収作業を開始。
テントに戻ると、テント内に雪が降っていた。結露したのが凍り付いて、はがれたもののようだ。
テント自体も生地が薄いので、ほぼ凍っている部分が見て取れた。これ、収納できるんだろうか。それぞれの装備をまとめ、僕はペグ類を回収。テントを持ち上げて中に入り込んだ雪を振り落とすけど、全然らちがあかない。結局そのままたたんでしまった。帰宅したらすぐ干さないと。
フットプリントとテントの生地は凍ってくっついてた。はがすときの感触がなんともいえなかった。
平地にならしたはずのテント場は、僕が寝ていた部分がすっかり解けて、坂になってしまってた。
下山はクランポンナシで。あるべきかなとちょっと思ったのだけど、別のパーティーを案内してたガイドも「アイゼン(クランポン)ナシで大丈夫です」と言っていたのもあり、歯が減るのも嫌なので収納。
道を下りながら落としたサングラスをさがしてみるも、見つからず。所々にある階段や段差はクランポンナシだとちょっと恐怖。
勝手知ったる道なのもあってサクサクと下山。ところが、堰堤に出たあたりから変な頭痛がしはじめ、そのあとは休憩を挟みながらの下山となった。
結局サングラスも見つからずじまい、残念だけどあきらめることにした。
美濃戸から美濃戸口の下山道は、雪が踏み固められてアイスバーン状態になっていてつるつるとよく滑る。クランポンをつけるほどでもないけど、滑るのは嫌なので、轍の盛り上がった部分を選んで歩くことにする。それでも道が曲がっているところは轍がきえるので、かなり怖い。軽アイゼンとかつけた方がいいのかな。
程なくして日が暮れ、最後の40分ほどは暗闇になった。ヘッドランプを最高出力にして、頭痛と闘いながら下山。一番最後の登りが効いた...
しっかし夜になると、人口の明かりが恋しくなるね。集落が見えたら「キター!」ってなる。
今回の登山で学習したことは、テルモスは一人1個以上持っているといいかなということ。暖かいお茶が持ち運べるのはかなり大きい。
そして、テントは冬用をできれば持って行くこと。寒いのはつらいし、ベンチレーション等きちんとしてないと、雪が降ってしまう。
もちろん、山小屋利用ならこの辺は心配しなくていい。
水はとことん凍るので、対策を万全に。テルモスに入れるのもいいけど、断熱材でくるんだりとかね。ハイドレーションはほとんど機能しない。どうしても使いたいなら、凍結対策がとられているやつとか買う必要があるかもしれない。
山小屋のごはんはおいしい。割高かなと思ったけど、ボリュームかなりあるし、お得感の方が大きい。
山小屋の食事を活用して、持ち込む食料を少なくしたりとか工夫ができそうだ。
この冬あと数回の参考を予定している。装備は一つ一つ充実させていって、快適な冬山ライフを送れるようにするのだ。
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